2009年6月29日
バイオリニスト羽純=川崎市中原区 |
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JR武蔵小杉駅(中原区)のバスロータリー前で、バイオリンを手に静かに演奏を始める。午後八時。日常が不思議な空間に変わる。家路を急ぐ人々らが足を止め、音色の周りに集まってきた。
昨年九月から続けるクラシックの路上ライブ。「聴く人と距離が近くて、一体感を味わえる」と楽しそうに話す。
バイオリンとの出会いは五歳のとき。「いろんなことに興味を持つタイプだった。書道に、新体操に、英会話に」。バイオリンは、たくさんの習い事の一つだったが、小学生時代を通して週三日以上の練習をこなし、だんだん夢中になっていったという。「バイオリンは音の長さ、強弱も自分の力加減一つ。自分の感情や気持ちを素直に、ストレートに表現できるんです」
次第にプロを意識し、二〇〇〇年に洗足学園高校(高津区)の音楽科に入学。その後、洗足学園音楽大に進学し、計七年間、バイオリンに没頭した。大学時代に、ジャズやボサノバを学ぶ仲間らと異色セッションを体験し、クラシックの新たな可能性を模索するようになったという。
「お堅いイメージから、距離を置かれることが多い。『クラシックだが、気軽に聞ける』。そんな音楽を生み出したい」と力を込める。楽団員を目指す仲間は多いが、あえて就職活動はしなかった。
〇七年春、大学を卒業したが「スケジュール帳はまっ白だった」。独自の道を探りながら、結婚式などで演奏する日々に「まず自分の音楽を聴いてもらおう」と決意。周囲の助言もあり、路上ライブを始めた。
ライブハウスやホールと勝手が違い、戸惑うことも多かったが、「カーペンターズなどを弾くと、その場で歌ってくれる人もいて、だんだん楽しくなってきた」。屋外だけに、使うのはエレキバイオリンだが、路上の情景を変える音色が評判を呼び、ファンも増えている。
路上から歩みだしたバイオリニストは「楽しい音楽を、バイオリンの音色に乗せ届けたい」と意気込んでいる。
(酒井博章)
本名は関野羽純。1984年6月生まれの25歳。東京都江東区在住。毎週木曜日にはかわさきFMにも出演。大学在学中にオリジナル曲「blossom」を含むCDを制作。今冬のリリースに向け新アルバムも制作中。天候によるが、隔週でJR武蔵小杉駅前で路上ライブを続ける。詳しくはホームページ=http://blog.livedoor.jp/hasumi_blossom/