[第2回 モーターホームの旅」(その1)

 [2009/05/02-2009/05/04]

 第1回の「モーターホームの旅」は、もう忘れてしまうくらい以前のことになっている。ホームページには、残っているので調べることは可能だが、調べても何の意味もない。

 当時は、パソコン通信、華やか成りし頃のことで、3名とも、若かった。3名の内、2名は、身体障害者みたいなもので、私は、障害者手帳を所持する、立派(?)な本物の障害者だ。そして、その2名が現役から離れ、隠居のような生活をしている。現役は1名だけで、本当は、仕事を止めたいのだが、腕の良さが災い(?)して、なかなか客(?)が離れるどころか、予約が次から次へと入るので、止められない状態が続いている。一応、健康体なので、奥様からは、仕事は続行するように進言されているようだ。

 従って、モーターホームの旅も、このゴールデンウィークに設定した。しかも、ETC割引が利くようになって、昼間は、渋滞が予想されるので、5/2の夕方6時の出発となった。姫路から、西へ向かって、山陽道を通り、岡山から蒜山、大山方向に進み、島根県のあたりに行くことにしてある。

 携帯の電送写真になってしまったが、モーターホームの内部は、こんな具合になっている。右前が運転席で、私の寝転んでいるベッドから前方を撮影した写真。

 ベッドは、ダブルベッドに近い大きさで、ゆったりとしている。こういうところに寝転んで、前方の窓や、サイドの窓から移り変わる景色を眺めているだけの旅というものは、快適そのものだ。

 今回は、現役の者が全行程のハンドルを握った。かなり疲れたと思う。運転席の天井部分を下ろすと寝台となる。こういうキャンピングカー(モーターホーム)で旅をするのは、宿泊費がゼロとなり、かなり経済的なものだ。しかし、利用回数が問題ともなっている。回数を重ねるほど割安になるが、度々、行けるというものではないので、レンタカーという手段がお得かもしれない。宿を予約してしまうと、必ず、そこまで行かなければならないが、こういう移動自由なものでは、気が向き次第、どこへでも行き先変更も可能だ。


 赤穂から、岡山までは、上り車線の渋滞はかなり続いていた。我々は、逆だから、比較的スムースに進む。ETCカードというものは、私は初体験だった。スピードを少し緩め、ETC専用の入口を通過すると、バーが気持ちよく上に持ち上がる。なるほど人が手でチケットを渡したり、現金の受け渡しなんかするより、簡単、確実で早く処理できる。ETCカードというのは、クレジットカードにもなっている。お買い物もできるようだ。JCB、VISA等々のカードにETCがはいっている。そして、レンタカーなんかの場合でも、その装置に、自分のカードを挿入すれば利用可能だそうだ。これなら、全ての車両が、このETC装置を付けてもらいたくなるハズだ。

 岡山の手前で、西行き車線も少し、渋滞に巻き込まれたが、数キロだけのことだった。米子道に移り、北上を開始した頃は、車両も減り、快適な走行に移った。ハンドルを握るのは、今回は、現役者、たった一人だ。車は、第1回の旅とは異なり、プジョーのものに変わっていた。前のものより広くなっている。例によって、前の席には、私以外の2名が座り、私は、後部のベッドに横たわった姿勢で、前方を見ているというスタイルとなった。このような楽な旅なら、かなり遠方まででも平気だ。こんな横幅の広い、デカイ車なんて、私の運転技術では、操作は到底無理だし、同行する2人も、はなから当てにはしていない。

 今回は、パソコン持参で、旅行記を書き上げるぞと、勇んでモーターホームに乗り込んだものの、夜間の出発となり、室内灯を点けてまで、書き込む気がなくなってしまった。ま、明日からでいいやという気になった。米子の手前の無人休憩所で、寝ることにした。トイレと、飲料の自販機があるだけの場所だ。モーターホーム以外のトラックや乗用車も停車している。運転席の天井部分を下げると、寝台になる。ここが、モーターホーム所有者のペット。後部の、テーブル席をベッドにするのは、簡単で、テーブルの片側に支柱をセットし、その上に、椅子の背もたれ部分のマットを取り外して並べて、寝台とする。その上に、コールマンのシェラフ(寝袋)を広げて私のベッドとした。昼間、私が寝転んでいたベットをM氏に寝てもらう。前の旅でも、このM氏のイビキには閉口したので、今回は、ちゃんと対策を立ててきた。それは、「おはようパーソナリティ道場洋三です」という番組で、当選して頂戴していた「きゅきゅラジオ」を持参したことだ。これは、昔の「ゲルマニュームラジオ」のようなもので、イャフォーンでしか聴けないが、イビキを聞くよりマシだろうと思った。

 昔の話だが、カセットテープの時代に、インドネシアで、購入した、ソニーのウォークマンは、日本で購入するよりも格安だったので、我々一行(私の仕事仲間達)のほとんどの者が購入したことがあった。関税の関係なのか、政策的なものかは、良く理解していなかったが、多分、日本の価格の半額よりも安かったように思った。そのウォークマンも、今では、Iポッドミニというのか、ペンダントくらいのサイズで、記憶容量たるや比較にならないくらい大容量となっている物になっているみたいで、しかも値も安くなっている。だが、もうアラカン世代の者は、手を出そうとは思わない方のほうが大半だろう。それに、羽純(はすみ)さんのパーソナリティ番組すべてと、他のYouTubeからダウンロードした音楽等を録音させて、持っていけば、雑音もなく快適なイビキ対策となるだろうとも思ったが、また面倒なマニュアルと格闘しなければならなくなってしまうと思って、諦めたのだった。

 その「きゅきゅラジオ」を活躍させる時は、すぐに訪れた。U氏は、本当に静かな男で、寝てしまうと、どこに居るのかわからないくらい静かだ。どちらかといえば、私もイビキは人後に落ちない自信(?)があるが、M氏のすさましさには適わない。おそらく、誰も適わないだろう。始まったなと思うと、素早く、イャフォーンを両耳にねじ込み、スイッチを入れる。すると、ポールアンカの「ダイアナ」が流れてきた。この曲は、私が懇意にしていた、ある自動車整備会社の社長が大好きな曲で、よくカラオケで歌ってくれたものだ。亡くなったが、いい男だった。私の影響からか、パソコンを導入して、旅行記も書き上げている。そうだ、帰宅したら、サイトが活きている間に、彼の作品を私のサイトにもコピーしておこうと思い立った。天国から著作権と叫んでも、悪意があってする行為ではないので許してくれるだろう。しかも、それを手伝ったのは私だ。あの頃は、すでにインターネット時代になっていた。いまダウンロードして、自分のサイトに収録するのに少し手間取ってしまった。フレームページにしていて、前半と後半に分割してアップロードしていた。それを1つのファイルに纏めて、私のサイトに入れてからリンクを付けたのだから、ややこしい操作をした。

 「きゅきゅラジオ」から、ポールアンカの「ダイアナ」が流れてきたので、その時、思った事を実行に移したのだった・・・

 物理的に、「きゅきゅラジオ」は、イャフォンがくっついているので、操作をミスすると、落して大きな物音がする。翌朝、大きなイビキをかいていた男に文句をいわれてしまった。逆らわず、悪い悪いと謝ったが、「?」ものだ・・・ここに少しだけ書き込ませてもらおう。それと、隣のトラックか、モーターホームが、突然、大きなエンジン音を立てる。これは、自動的にエンジンがかかったり切れたりするみたいだ。これも、眠りの妨げになった。

 トイレから戻ると、私の携帯電話をどこかに紛失してしまっている。慌てて、身障者用のトイレを探しに戻るが見あたらない。U氏とM氏が、私の携帯に電話を掛けてやるから、音を探せというが、どこにもない。諦めてモーターホームへ戻る。エンジンをストップして、再三、車内を探すと、かすかにベッドの周辺で振動している音が聞えた。車内にあることが解れば、慌てることもない。

 そんな事があっても、朝は、予定より早い午前4時頃の出発となった。携帯電話探しは、次にストップした時で良い。朝食を、どこかのサービスエリアでとる予定にしている。ETCの割引というのは、有料道路に入るとどこかで出るまでが千円ということだそうだ。一旦、一般道路に出てしまうと、そこまでとなるので、どこで降りて一般道路に移るのかは、前もって計画しておかないとならないらしい。しかも、土曜、日曜、祭日の間だけというので、サービスエリアで、夜を明かすという車も多いそうだ。

 私は、後部ベッドでウトウトしていればいいだけのものだから、昨夜の寝不足を補っていたら、どこかのサービスエリアで停車した。モーニングだと起こされた。

 どこの喫茶店にでもあるようなモーニングセット(コーヒー、トースト、卵、サラダ・・・)といった内容だ。ここで、イビキ男が言った感想というのは、金言ものだった。時々、人は、自分が何気なく喋っていることが聞く人によっては、凄いことだと思う場合がある。私にとっても、素晴らしい内容だと思ったので、ここに披露しておこう。最初は、もの静かに眠っていた男が、その事に話題を振ったのだった。「もう一杯、コーヒーが飲みたいな・・・缶コーヒーでもいいけど・・・」すると、そのイビキ男が、いつも行っているモーニング会でも、もう一杯欲しいと思うことが多い。二杯目は、少し安くしてくれるといいのにと、ポツリ。ロイヤルホスト等は、アメリカンコーヒーのおかわり自由で、何杯飲んでも勘定は同じだ。そこまでしなくてもいい。地方によってモーニングの価格相場はちがうにしても、例えば、400円としてみょう。もう一杯飲みたくなった時、いくらならオーダーしてもいいと考えるか?いくらくらいなら、サービスしてもいいと考えるか、客と店の立場になって考えてみてほしい。私は、2杯目が100円か、150円までくらいならオーダーしたいと考える。私も、喫茶の経営に少しだけタッチした経験がある。だから、そういうことまで、彼らの言葉から、頭の中で展開してみた。このサイトを読まれている方の中にも、喫茶店関係者がおられるかもしれないので、ここにメモ的に書き込んでおこう。

 スタート前に、本格的に携帯電話を探してみた。携帯の電池切れを心配したのだ。今度は、見つけた。やはりベッドの下に落ちていた。この携帯の写真機能は、とうとう出発までに十分にマスターしていない。着信履歴を見ると、彼らからの受信記録が10回を超えていた。発見を機に、撮影して、本体に記録するようにして行く。結果的にだが、これが、旅行記を書き込む助けになってくれたから、朱勲賞ものだ。

 プジョーは再び、走り出した。今度は、有料道路から出る段取りらしい。それにしても、なんだか、前の席の二人は、何か大切な相談をしているみたいだった。ETCのゲートをくぐりぬけ一般道へ入ると、左右をキョロキョロと何かを探している様子だった。ようやく発見したのか、あそこだとか叫んでいる。ガス欠、寸前だったようだ。軽油を満タンにしたところで、胸をなぜおろしていた。

 このモーターホームを3名だけで使ったのだから、内部は、余裕たっぷりだった。もちろん、トイレも備わっているが、後始末のことを考えると、面倒なので、自炊すらも禁止ということにした。面倒なことはすべて省き、ゴミ袋だけは、沢山用意している。各所のサービスエリアに分別ゴミ箱が備わっているし、身障者用トイレもある。

 今回の旅では、どこのサービスエリアにも身障者用のトイレが備わっているのには少し、驚いた。マニュアルに入っているのかもしれない。業者も、工事費が稼げる。行政は、そういうとろには目を行き届かせている。どこかの都市で、マークの問題で、やり直しさせ、ムダな経費を浪費させたと問題になったが、福祉関係の費用には、あまり指摘する人もいないようだ。必要以上に広いスペースを占めている。設備が豪華すぎる等と指摘すると、袋叩きに遭いそうだ。
 この写真は、種を明かせば、携帯から、直接、パソコンに取り込んで、利用するつもりだったが、まだマニュアルを勉強していないので、仕方なく携帯から、ブログへ送信したものだ・・・

 ひとまず、安心したのか、こんどは、浜田漁港へと向かった。港にある水産会館の2Fに、「かよちゃん食堂」という看板を見つけた。こういう店は、新鮮な魚介類が食べられる。ステッキを突きながら、2Fへと階段を昇る。名前とは裏腹に、でっぷりしたオヤジが一人だけで切り回しているような小さな食堂だった。客も割合と入っていた。全部で18〜20名ほどの席数だった。運転をしなければならないので、ビールは1本だけ頼んで、刺身の盛り合わせと定食を頼んだ。その時に、テーブルで見た、新聞の一面に囲み記事で、己野清志郎(いまわの きよしろう、本名は栗原清志=くりはら・きよし、1951年4月2日ー2009年5月2日)氏の訃報が報じられていたのだった。確か、スポーツ新聞だったような気がする。関連記事を読もうと、別の面を調べてみたが、トップの囲み記事しかなかった。ネットでは、大変な騒ぎとなっているだろうと思っていたが、旅先のことだ。帰宅してから調べることにした。当然、他の二人は、その件については知らない。オヤジ一人だけで作る料理がでてくるのは遅いが、こういう場所では仕方ない。後で、知ったのだが、下の市場で、魚を購入してきて、ここで料理してもらっている客もあったようだ。出してもらった刺身も美味しかった。ビールの中ビン1本を3名で分け合って呑むというのは、少ない。もう1本追加した。

 「かよちゃん食堂」の前の駐車場に停めている、モーターホームの内部で少し休んでいると、パトカーが、一時停止を無視した車を発見してサイレンを鳴らして捕まえた。信号無視で2点、反則金9千円の口だろう。漁港内で誰も人は通っていない場所だが、運の悪いことにパトカーが居た。その様子を見ていて、スタートしなくて良かったと思った。

                              (続く)